人体内の旅はサイケデリック

映画「ミクロの決死圏(原題:Fantastic Voyage)」を観た。

この映画は1966年のアメリカ映画で、SF映画だ。

この映画では、人や物が細菌のサイズになって、人体の中で人体の治療をするという空想的な話だ。人間や物を縮小する技術がこの映画の中では開発されている。政府主導によって。

だが、その縮小技術には欠点があった。その欠点とは、人や物を縮小できる時間が限られていることだ。その縮小する技術では人や物は60分だけ縮小することができる。

しかし、その60分のというタイムリミットをなくすことができる技術を持つ人物がこの映画には登場する。それはベネシュという人物だ。ベネシュは縮小のタイムリミットをなくす技術を持ってアメリカ(?)にやって来る。

しかし、ベネシュを乗せた車は何者かの襲撃に遭い、ベネシュは脳に重大な怪我を負ってしまう。その怪我の治療に、縮小する技術が使われることになる。

人の体内に、潜水艦を使って人が入る。その過程がこの映画そのものだ。

人の体へは、チームとなって入っていく。潜水艇には、治療者、操縦者、指揮官、そして警備の人間が乗る。なぜ人体の治療に警備員が乗るのか?それは何か知らないものが治療者たちを攻撃するかもしれないからだ。作品中のこの示唆が、この映画の緊張感をさらに高める。

この映画の原題はFantastic Voyageだ。直訳すると“風変わりな航海”。

体内の様子はコンピュータ・グラフィックスや模型を利用して作られているが、この映像が実に不思議な感じだ。そう言うならばこの映像はサイケデリックだ。体内の映像に現実的なもっともらしさを求めているというより、まるで異世界が人間の体内あるようだ。

映画のセリフにも「人体は宇宙だ」というようなものもある。そうこの映画の中で描かれる人間の体内は、空想的で、法外で、風変わりで、異様で、素晴らしいのだ。

この映画が撮影されたのは、1966年あたりなのだろう。1966年が映画公開年だとすれば、映画の製作は2年前ぐらいには始まっていると思われる。その年は1964年となるのだが、この60年代にはサイケデリックなカルチャーが流行していた。

1967年にはサマー・オブ・ラブがあり、ヒッピーたちが街にあふれた。ドロップ・アウトしたり、ドラッグをやる人もいた。サイケデリックな60年代が生んだトリップ(旅)がこの映画なのではないのか?