他者の言葉を理解する

映画「メッセージ(原題:Arrival)」を観た。

この映画は2016年のアメリカ映画でSFドラマ映画である。この映画の主人公は、言語学者であるルイーズ・バンクスであり、ルイーズが到来した宇宙人の宇宙船(=殻)で、宇宙人と会話をするのがこの映画の主な内容となっている。

映画中に登場する宇宙人の姿は足が7本あるタコのような姿である。この宇宙人をルイーズたちは、ヘプタポッド(ギリシア語でヘプタは7、ポッドは足を表す)と名付けている。

ヘプタポッドは2人登場する。片方をアボット、もう片方をコステロとルイーズたちは命名する。

先程からルイーズたちと言っているが、、宇宙人(エイリアン)と対話するのは、アメリカ軍やCIAやFBIを中心とするアメリカ政府だからである。ルイーズたちとは、ルイーズという言語学者を宇宙人の対話相手に使うアメリカ政府の集団のことである。

さて、宇宙人は地球の12か所に降りてきたわけであるが、なぜ地球にやってきて、何をしに来たのかが、この映画の中心の話題となる。

ルイーズが宇宙人にこの問いを投げかけると、宇宙人たちは「武器を提供しにきた」と答える。このことにより、地球の政府はパニックになるのだが、これはルイーズの誤訳であることが後にルイーズによってわかる。

正解は宇宙人たちはルイーズに「言葉を提供する」と言ったことがわかる。さて宇宙人たちがルイーズに言葉を提供するとはどういうことか?それが宇宙人たちにとって何の得になるのか?

まず、宇宙人たちは3000年後に地球人の助けが必要になる時が来るという。そして宇宙人たちは、時間を自由に行き来できる存在であるということがわかる。つまり宇宙人には時間は流れるものというより、自由に行き来できるものなのである。

宇宙人たちは未来を見ることも、過去を見ることも可能なのである。宇宙人の言葉を与える。宇宙人の言葉には時制がない。どこの時間でも行ける。つまりこのどこの時間にも行ける能力を宇宙人の言葉を習得することにより、ルイーズも自由に時間を行き来できるようになる。

複数の区域に分かれて対立している人間たちをひとつにまとめあげること。これがルイーズに宇宙人たちが託したことである。

宇宙人を敵とせずに地球の内部にも敵対が生じないように事を運ぶこと。これがルイーズの役割だったのである。

ルイーズの誤訳は混乱を招くが、ルイーズの努力による正確な訳の提供が、人類を協力の道に導く。ルイーズが宇宙人という他者を相手にして行なった翻訳をおのおのが、おのおのに対して行うこと。それがこの日常を生きていくということかもしれない。そして、その翻訳にはたくさんの想像力が必要になるだろう。