映画「フェンス(原題:Fence)」を観た。
この映画は2016年のアメリカのドラマ映画であり、アメリカの黒人家庭の一期間を描いた映画である。
この映画はマキソン家に関わる人々、特にその家族、その家族の主人であるトロイ・マキソンについて描いている。
トロイには、弟、妻、2人の息子、娘がいる。トロイの弟はゲイブという人物で戦争で頭部に損傷を負い、精神障碍を持っている。戦争とは第2次世界大戦だと思われる。
そしてゲイブの戦争での負傷の代償として、トロイは国から3000ドルを貰い、そのお金で家を持つことができた。
トロイの妻はローズ・リー・マキソンという。トロイとは「18年間結婚していた」とのセリフがあり、映画の展開を見ていると、18年以上は結婚生活が続いていたようである。
2人の息子とは年長からライオンズとコーリーである。ライオンズは音楽で生活していくことを夢みている34歳の青年として登場する。
コーリーは高校でフットボールで才能を発揮している学生である。
娘はレイネルという。レイネルは、トロイとトロイの浮気相手であるアルバータとの子供である。映画の中では娘レイネルが生まれて、レイネルが10代ぐらいになる姿まで描かれる。
この映画のタイトルにあるフェンスとは柵のことである。トロイは妻ローズの頼みで家を囲う柵をコーリーと作っている。映画が進むにつれてフェンスは完成に近づいていく。
映画のラスト、トロイの葬式に向かう時には、フェンスは当然のように家を囲っている。トロイは、フェンスをローズとの約束通りに作り上げたのである。
フェンスは硬い木でできた木製のもので、何年も持つような頑丈なものである。このフェンスとはきっとトロイの中にある柵の比喩になっている。
人間は生まれたばかりの時には、心の中に偏見はないはずである。人生を過ごすことによって心の中に偏りが出てくる。「あの人とこの人は違って悪い」などという偏った見方である。
この偏り、違いをとらえる視線は人の心の中に柵を作り上げる。この柵は世界のものを常に区別する。時には必要のない区別を人の心の中に作り上げることもある。
トロイにとっての柵とは、人種差別である。白人と黒人は別で、黒人は白人より下だ。この固定観念は、トロイの中に染みついている。
一方柵をなくすものがある。それはトロイが口ずさむトラディショナルのオールド・ブルーという曲だ。子供たちはその歌を歌うことで異母兄弟という柵を超えて1つになるのだ。