産業が大事?それとも環境が大事?

映画「ナイスガイズ!(原題:The Nice Guys)」を観た。

この映画は2016年のアメリカ映画で、映画のジャンルはミステリー・クライム・スリラー・アクション・コメディである。

この映画の主要人物は3人いる。ホランド・マーチとホリー・マーチという父娘の2人とジャクソン・ヒーリーという殴り屋である。

ホランド・マーチは私立探偵として娘を養っている。ホランド・マーチの妻=ホリーの母は死んでおり、その上家は火事で焼失してしまっている。

ジャクソン・ヒーリーは護身術のプロであり、女性に頼まれては男をボコボコにするという仕事をしている。

ホランド・マーチは浮気調査や人探しを仕事としている私立探偵である。

映画の舞台は1977年のアメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルスである。この時代のアメリカ自動車業界と政府の関係が映画の背景にある。

当時アメリカの自動車産業は好調で、3大自動車メーカーである、ゼネラル・モーターズフォード・モータークライスラーが市場を独占していた。しかし自動車は排気ガスを出すという欠点を持っていた(今でもそう)。

アメリカ合衆国では1963年に大気汚染防止のための法律であるマスキー法が成立していた。地球の環境を守るために大気汚染をなくすことを目的とした法律である。当然、自動車の排気ガスも規制の対象となる。

この映画の中では、自動車業界と政府(司法省)が組んで、この法律に反する行動をとっている。つまりマスキー法で排気ガス規制をされると、ガソリンを大量にくうアメリカ車は立場がなくなる。ガソリンをどんどん使って走って排気ガスを出すのがアメリカ車なのである。ガソリンの消費量を減らし地球に優しい車を作る技術は当時のアメリカにはなかったのだろう。

排気ガス規制は、アメリカ車販売の勢いをそぐものと3大自動車会社には映ったというのがこの映画の展開である。

ホランドとヒーリーはアメリアという若い女性を探すように依頼される。そしてこのアメリアがアメリカ政府の司法省の重役の娘で、アメリアが母親たちを潰そうとして排気ガス規制法についての映画を撮ることが、この映画の要点になっている。

排気ガスは環境に悪くても、産業はアメリカを支えているから大切だと言う母と、悪いことはダメという娘の対立を軸に、この映画は展開していくのである。

政府と産業の思惑のために多数の犠牲者が出る。ホランドはこう言う。「これくらいの犠牲はまだ少ないよ」と。世界にはもっと巨大な悪があるのだろう。