ゾンビを殺せ!!

映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 30周年記念バージョン(原題:Night of the Living Dead:30th Anniversary Edition)」を観た。

この映画は1968年の映画である「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(原題: Night of the Living Dead)」の30周年を記念して作られた1999年の映画であり、この映画の1968年版の脚本を担当していたジョン・A・ルッソが新たに15分の追加撮影を加えて再編集したものである。

この映画はゾンビ映画であり、ある日突然登場したゾンビがどんどん増えていき、ゾンビに追われながら逃げ延びたベン、バーバラ、トム、ジュディ、ハリー、ハリーの妻、カレンという3人の男と4人の女が(女の子を含む)が、田舎の一軒家に立てこもるという話である。映画の中心となるのはアメリカの東部である。

この映画の中にはヒックスという神に仕える男が出てくる。その男はこう言う。「全能の神を信じる者は不滅の魂を得る」と。不滅の魂を得た者とは何者か?それは一応ゾンビであるということができる。なぜならゾンビとは一旦人が死んで再び蘇ったものだからである。

ゾンビは通常の人間よりは不滅の死に一歩近い。しかしそのゾンビは既に一応と記したように人間に頭を砕かれると死んでしまう。つまりゾンビは神のことを信じておらず、死が訪れる存在なのである。

ゾンビとなる前に神を信じていた。ゾンビとなり人を殺して食った(食いたいと、殺したいと思った)。つまりゾンビとなることは神に背くことなのである。一度ゾンビになって蘇ることにより神に救われたかに見える人間は、結局は神に背くゾンビとして生き返ったに過ぎなかった。

不滅の魂とは単なる神のいたずらに過ぎないのではないだろうか?

映画の最後にヒックス師が「神を信じていない者は地獄で焼かれるがいい」と言うが、ゾンビも人間も地獄で焼かれるのかもしれない。なぜなら人間は今や信仰より科学や技術に夢中だし、ゾンビは人を殺す。どちらもヒックス師の祈る対象である神にとっては罪人だからだ。

映画中ショッキングなのは、ラストのゾンビと疑わずに動く人影を撃ち殺すシーンである。「目と目の間を狙え」と保安官が言うと自警団の男が、黒人の生存者ベンを銃で撃ち殺す。もしベンが白人だったら、白人から成る自警団の人々はベンを助けたのだろうか?

最期のシーンの強烈さによって、ゾンビ狩りは黒人をリンチして殺していた時代のアメリカを思わせるものとなる。白ならゾンビでない?黒ならゾンビだ?