フリー・セックスとブロマンス

映画「さすらいのカウボーイ(原題:The Hired Hand)」を観た。

この映画は1971年のアメリカ映画であり、アメリカの西部開拓時代に生きたカウボーイ2人とその片方の妻子を描いた映画である。

1848年にアメリカ大陸の西、カリフォルニア州で金鉱が発見されると同時にゴールド・ラッシュが起こり、アメリカの西側である太平洋岸が開拓された。その後開拓は、カリフォルニア州の海岸から内陸に向かって進むのだが、この映画の登場人物たちは、内陸部からカリフォルニア州の海を目指している。

ということは開拓初期の段階か、それとも発展したカリフォルニア州を目指す田舎の人の話であると思われる。

この映画の主人公ハリーはアーチとダンという男と一緒に放浪の旅をしていたが、急に家が恋しくなったとある町に着いた時に言い出す。それはきっとハリーたちが釣りの最中に発見した金髪の少女の川に流れていく死体を見たからであろう。ハリーには一人娘がいたのだった。

ハリーは家に戻ると、ハンナという名のハリーの妻はジェイニーというハリーとの間の娘を連れて生活している。ハリーは男の姿のないことに安心するが、街でハンナは誰とでもセックスするのだと酒場の下品な客に言われる。

この映画は1971年の映画であるが映画は完成するまでに2~3年かかるそうなので、この映画が作られ始めたのは、1968年か1969年頃になると思われる。1969年と言えば、サマー・オブ・ラブというヒッピーたちによるフラワー・ムーヴメントが終わりを迎えた年である。

なぜここでヒッピーの話が出たのか?それはハリーの妻ハンナの奔放さと関係する。ハンナは誰とでもセックスする女、つまりフリー・セックスを信条とする女性である。

フリー・セックスとはフラワー・ムーヴメントの特徴の一つでもある。ちなみにカリフォルニアはママス&パパスの「夢のカリフォルニア」という曲にあるように、ヒッピーたちの聖地である。

ハリーはカリフォルニアという夢の街を目指すのを止めて家に帰ったら、そこは1848年の古い家のしきたりがあるはずだったのが、1960年代後半の時としては最先端の文化(フリー・セックス)がある自由な家だったのである。

この映画ではハリーは友人2人の敵討ちをする。ハリーはそのうちアーチという男にとてもひかれている。ハリーはアーチと2人で、1848年に現れた1969年バージョンの家に帰るのだが、アーチが西を目指して家を出るまでハンナとセックスしようとしない。

ハンナはハリーの気持ちに鋭く気付いている。ハリーはアーチのことが好きだ。セックスはしないが、そこにはハンナに対する愛に匹敵するほどの愛がある。ハリーは同性間のセックスに対して開放的ではなかったが。