囚人の権利

映画「ニューヨーク1997(原題:Escape from New York)」を観た。

この映画は1981年のアメリカ映画で、1981年にとっての近未来である1997年のニューヨークのマンハッタン島を描いたSF映画である。

1988年アメリカは犯罪率が4倍になり、マンハッタン島の周囲に高さ12メートルの壁を張り巡らし、マンハッタン島そのものを刑務所としたものが存在するというのがこの映画の設定である。そしてその島にアメリカ大統領が乗った飛行機が墜落するのがこの映画の始まりである。

アメリカ大統領は中国とソ連とのサミットに向かう途中、アメリカ解放舞台の女性にエア・フォース・ワン(大統領専用機)をハイジャック(のっとり)される。女性は言う。「アメリカ大統領をアメリカが作った刑務所の中に入れる。アメリカという国は帝国主義で、人種差別の国家である。その国の大統領を刑務所の中に入れるのだ!!」と。

囚人が暮らすマンハッタン島にもアメリカ合衆国に反抗する地下組織が存在する。黒人のリーダー、デュークが先頭となる暴力的集団である。デュークたちは刑務所の外に出ることを願っている。デュークたちはアメリカ大統領を外への脱出の切符として使おうとする。

そんな中アメリカ政府からの大統領救出の命令を課せられた囚人スネーク・プリスキンがたった一人でマンハッタン島に侵入する。スネークはある罪により、ニューヨークのマンハッタン島という刑務所、つまり大統領が捕らえられたデュークという黒人男性が仕切る場所へ投獄される予定だったのである。

政府は投獄予定だった囚人を大統領救出のために使用したのである。それはただ単に使い捨てのような役回りである。そうスネークは大統領救出に出発する直前に体に時限式の自爆的な物質を入れられることになる。

「22時間以内に大統領を救出しろ。しなければお前は体の中にある物質により死ぬ」と、政府の刑務所の管理代表者であるボブ・ホークは言う。

映画の最後自らの命と大統領を救ったスネークは大統領に言う。「国家のために犠牲になった者たちへの言葉は?」。大統領は感謝の意を表すがその直後にこう言う。「テレビに私が映るのは2分後か?」。

そう大統領にとっては国家のために犠牲となった命など、テレビというものの前にはただの些細な用事に過ぎないのである。映画のラスト、大統領がテレビ放送向けに流す核エネルギーの安全性を示す情報に代わって、この事件中に死んだキャピーというタクシー運転手の好きな音楽が流れる。大統領のギョッとした表情に失笑がこぼれるだろう。