移民が移民を排除する

映画「天国の門(原題:Heaven’s Gate)」を観た。

この映画は1980年のアメリカ映画で監督はマイケル・チノミで、19世紀末から20世紀の初頭までの期間を描いた映画であり、映画の主題は、移民の対立と恋愛である。

この映画の中で描かれているアメリカでの移民の対立は実際にあった。ワイオミング州のジョンソン郡でのジョンソン郡戦争のことである。

アメリカは移民の国である。アメリカ大陸に移民よりも先に住んでいたのはアメリカ・インディオの人々である。そこにヨーロッパから白人が入植し、インディオたちの土地を奪って、そこで農業や牧畜を始めたのである。

アメリカとはインディオからヨーロッパ白人たちが奪った土地であり、アメリカで幅をきかせている白人たちは皆移民なのである。つまり、アメリカに住む白人はインディオから土地を奪ったという罪をおっている。

それに加えてアメリカの移民たちはもう一つの罪を犯すことになる。それがこの映画に描かれている移民による移民の排除である。アメリカ移民たちはインディオから土地を奪い、奪った土地を自分たちの所有物として独占しようとして、後から入植してきた移民たちを排除しようとしたのである。

映画では新しい入植者として農場主と商人たちが登場する。そして先にアメリカに入植していた牧畜業者協会が新しく入植してきた農場主や商人たちを武器を用いて殺すのである。

移民が自分と同じく移住してきたものを冷遇し、殺害する。生活のためにやっていることだと殺人を合法的だと正当化するのが牧畜業者協会である。

アメリカに移り住んだのはヨーロッパで不遇の運命にあり、それを脱却しようとした人々である。アメリカはイギリスからの独立を勝ち取ることで自立した。ではアメリカ人として自立したのは誰か?それは当時のイギリス人たちである。

イギリスでは国教以外の宗教を弾圧していた。イギリスから独立した元イギリス人たちは、イギリスの国教以外の宗教を信仰していた。だから本国イギリスでの生活に耐えかねて、新天地アメリカに彼らはやってきたのである。抑圧された者たちが作り上げたのがアメリカなのである。

しかし、この映画で描かれる移民は移民を弾圧し抑圧する。自分たちの住むアメリカのルーツ(非イギリス国教派がイギリスから逃れてアメリカに移り住んだ)をこの移民たちは全く知らなかったのであろうか?

「そんなもの知ったことか!!俺たちは俺たちのルールでやる。歴史など糞くらえだ!!」そんな言葉が聞こえてくるようである。自らの歴史を知る。これはとても大切なことだ。同じ過ちを繰り返さないためにも。