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支配は人を抑圧する

映画「ラブ&マーシー 終わらないメロディー(原題:Love&Mercy The Ture Story of Brian Wilson)」を観た。

この映画は、アメリカ合衆国カルフォルニア州出身のロック・バンド、ザ・ビーチ・ボーイズのメイン・ソング・ライターのブライアン・ウィルソンの半生を描いた、2015年制作の映画である。

この映画は1980年代のブライアン・ウィルソンを描いた部分と、1960年代のブライアン・ウィルソンを描いた部分から成っている。この2つの時代が同時進行することで映画は進んで行く。

映画の1960年代を描いた部分ではアルバム「ペット・サウンズ」とシングル曲「グッド・ヴァイブレーション」の制作過程が描かれており、1960年代ではブライアン・ウィルソンが立ち向かう敵としてブライアン・ウィルソンの父がいる。

1980年代の部分では、精神的に疲弊しきったブライアン・ウィルソンの生活が描かれており、ブライアン・ウィルソンの敵としてブライアン・ウィルソンの主治医ユージン・ランディが登場する。

1960年代に登場する父と、1980年代に登場するユージン・ランディは似たような存在である。ブライアンの父も、ユージンもブライアン・ウィルソンを支配することによってそれぞれ父とユージンの幸福(=お金)を手に入れようとする。

父は家族のためだとブライアンを搾取し、ユージンはブライアンの病気のためだとブライアンを監視する。

父はブライアンが作曲した曲を勝手にA&Mに売って75万ドルを手に入れ言う。「家族のためだ。音楽産業なんて5年後はどうなるかわからない」。ユージンはブライアンに妄想型統合失調症という病名を与えて、ブライアンを薬漬けにする。「君の病気のためなんだ」と。

父とユージンはブライアンにとっての神のような存在である。父とユージンはブライアンを自由にコントロールする。LSDの体験としてブライアンが神を感じると泣き出すシーンがある。そうブライアンの中にいる神(=父的存在)は恐れられる神なのである。

ブライアンを愛で解放してくれる(語義矛盾?)神的な存在は居ないのか?いる。メリンダ・レッドベターという女性である。メリンダはユージンに薬漬けにされているブライアンを、ブライアンの家族を動かすことによって法的にユージンから解放する。

その前兆を知ったユージンは、メリンダのオフィスに怒鳴り込む。メリンダはユージンの狼狽ぶりに笑みをこぼすが、ユージンの「ブライアンの金が欲しいなら順番待ちだ」という言葉に我に返る。そしてメリンダはブライアンの元から去る。

これがメリンダの素晴らしさである。そして映画の最後にブライアンがメリンダを探し出して2人は結ばれる。さらにブライアンにとってメリンダが素晴らしい存在になったのである。