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子供時代を忘れてしまう大人たち

映画「大人は判ってくれない(原題:Les Quatre Cents Coups)」を観た。

この映画は1959年にフランスで制作された映画であり、ある一人の不良少年の成り立ちについての映画である。この映画の原題を直訳すると「400回の殴打」となるそうである。では「400回の殴打」とは何を意味しているのだろうか?

この映画の中では、主人公の少年アントワーヌ・ドワネルが大人に殴られるシーンが何度か出てくる。アントワーヌは父親そして鑑別所の職員に殴られる。この映像が示していること、それはアントワーヌが大人たちに直接殴られたり、直接殴られると同様のような仕打ちを受けてきたことではないだろうか?

アントワーヌは周囲の大人たちに肉体的にそして精神的に痛めつけられているのである。アントワーヌの周りにいる大人たちは、正直な少年に対して冷たい仕打ちをする人ばかりだ。その代表がアントワーヌの父と母に現れている。

アントワーヌの父と母はアントワーヌに対して冷たい。アントワーヌには愛情が足りていない。アントワーヌは映画が好きで、時折両親はアントワーヌを映画に連れて行ってくれるが、それは一時の気休めでしかなく、父と母はアントワーヌを邪魔ものとして扱う。

その結果としてアントワーヌは家出をすることを選び、生活するお金欲しさに泥棒をする。愛情が足りないがゆえに家出の道を選ばざるえなかったアントワーヌ少年に対して、父と母は言う。

父「アントワーヌを少年鑑別所に入れてくれ」。母「アントワーヌをもっと怖がらせて」。

アントワーヌは鑑別所の中で女医から受けた質問に対してこう言う。「本当のことを言っても信じてもらえないんだ」。アントワーヌの口から出た本音である。

このアントワーヌの言葉を聞いた母親は何というか。「あなたは親に対して何てことを言うの!!反省しなさい」である。

ある時母親はアントワーヌに「作文がうまくいったら、1000フランあげるから作文を頑張って書いて」と言う。するとうれしくなったアントワーヌは良い作文を書こうとして小説家バルザックの「絶対の探求」を暗記して、それを作文として学校で書く。

するとそれを読んだ学校の先生はこう言う。「これはただの盗作だ」。アントワーヌはバルザックの文学の中にある光をみつけたようで、バルザック肖像画を飾りそこに蝋燭の火を灯す。するとそれが原因でボヤが起きる。

当然父と母は理由も聞かずにアントワーヌを怒鳴りつける。アントワーヌは「盗作」という概念を知らなかった。火事騒ぎを起こしたくて起こしたのではない。アントワーヌは「世界の危険」に対して無知だっただけである。ただ学習の機会に教えるべき大人たちが不在だったのである。

少年(もちろん少女も)は無限の可能性を持っている。そして彼らの成長には導き手となる大人が必要なのである。(半面教師ということもあるかもしれないが…)。