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戦争の不条理さ

映画「史上最大の作戦(原題:Longest Day)」を観た。

この映画は1962年のアメリカ映画であり、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦を描いた映画である。1944年、ヒトラー総督の率いるナチス・ドイツはその勢力を西ヨーロッパまで拡大していた。もう少し西には海を隔ててイギリスがある。

イギリスは当時、ドイツ軍による空爆攻撃を受けていた。ナチス・ドイツを放っておけば、イギリスはドイツ軍によって占領されてしまう。ドイツの勢力拡大を抑えようとフランス、イギリス、アメリカを主とする連合国軍は、当時ドイツの占領下にあった現フランス北西部のノルマンディーから上陸し、ドイツ軍に占領された土地を取り戻そうとしているのであった。

アメリカ、フランス、イギリスを主とする連合国軍とナチス・ドイツを率いるヒトラーという図式がここにある。

映画で中心として描かれるのは、ノルマンディー上陸作戦の際に上陸したいくつかある海岸のうちのオマハ・ビーチと内陸のサント・メールに降りた落下傘部隊の苦闘の様子である。

連合国軍の兵は300万、ドイツ軍の兵は50万である。連合国軍の方がはるかにドイツ軍を上回る数の兵を持っている。しかし、上陸作戦はその2ヶ所(オマハ・ビーチとサント・メール)で苦戦していたのである。

ドイツ軍はノルマンディー上陸を予想していなかった。ノルマンディー作戦が行われた6月5日から6月6日にかけては悪天候であり、しかもノルマンディーはイギリスからヨーロッパ大陸へ隔てる幅が広く、ドイツ軍はイギリスから最も近い海岸があるノルマンディーよりももっと北の方にある海岸から連合国軍は攻めてくると思っていたのである。

ドイツ軍の不意を突いた連合国軍はオマハ・ビーチとサント・メールで苦戦するも上陸作戦は成功する。「史上最大の作戦」というタイトルから士気高揚のための戦争賛歌映画を想像してしまいそうになるが、この映画の戦争の描かれ方は暗い。

ドイツに占領された旧フランス領ノルマンディーの海岸一帯に連合国軍が軍艦から集中砲火をあびせるシーンがある。当然ノルマンディーには反ドイツの親連合国である住人もいる。映画中では、その人の家に連合国の砲弾が降り注ぐのである(映画中その人物の生死は描かれない)。

まさに戦争である。敵も味方もあったものではない。戦争では大多数の命と引き換えに少数者の命が平気で排除されてしまうのである。連合国軍の兵士がオック岬のドイツ大砲台を目指して死にもの狂いで進んで行くが、大砲などどこにもありはしないと分かる。“大砲があるかもしれない”という囮のための無駄死にである。