成長の物語、大切な物、大切な仲間

映画「ピッチ・パーフェクト(原題:Pitch Perfect)」を観た。

この映画は2012年にアメリカで制作された映画であり、大学のアカペラグループを描いたミュージカル風コメディ映画である。主人公はバーデン大学に通う女子大生のベッカである。

ベッカの通うバーデン大学にはいくつかのアカペラグループがあり、ベッカは父の説教(大学に通うなら大学生として集団の中で生きる姿を見せてみろ)の影響でアカペラグループのうちのバーデン・ベラーズに入ることになる。

ベッカの入ったアカペラグループ、ベラーズのメンバーは個性的なメンバーが集まっている。自分が太っていることを陰で言わせないために自分で“太っちょ”という愛称を名前の前につける子や、レズビアンの子、性的に奔放な子、いつも小声でしか話さない子などがメンバーにいる。

ベッカはアカペラグループに通いながら、大学のFMラジオ局にも通っている。そこで知り合うのがジェシーと言う男の子。しかしジェシーは、ベラーズとライバルの同校内のアカペラグループ、トラブル・メーカーズのメンバーである。

ベッカは音楽を制作することを将来の仕事にしたいと思っており、ジェシーは映画音楽の世界で働きたいと思っている。同じ目的を2人は共有することのできる関係である。2人の関係はどうなるか?それがこの映画の結末部分に描かれている。

ベッカは元々あまり社交的な性格ではなく、大学の寮の部屋で音楽のミックス・データを作っているタイプの女の子である。映画の中でベッカはベラーズのリーダー的人物オーブリーと対立することになる。音楽の(選曲の)方向性を巡って。

アカペラグループで成功しなければ大学を辞めろと父親に言われている父親っ子のオーブリーは、手堅く成功を狙う保守的な姿勢である。それに対して両親が離婚をして父親に育てられているベッカは開放的な構えである。

音楽の選曲もマライヤ・キャリーを選曲する保守的なオーブリーと違って(この場合保守的とは良い子ちゃんのこと)、ベッカはドクター・ドレのヒップ・ホップを人前で歌ってみせる。

良い子ちゃんのマライヤ・キャリーとは違って、ドクター・ドレのヒップ・ホップの曲は当然のように「ペアレンタル・アドバイザリー(購入するのに親の許可がいる)」の表示がついている。

開放的なベッカの選曲は周囲にウケがいい。しかしベッカにも問題点がある。それは時に助けてくれる人をも拒絶するほど孤独であることである。

ベッカがオーブリーと言い合いになった時、フォローしてくれようとしたジェシーに対してベッカは「ほっといてよ!!」と言い返してしまう。

人生では生産的な関係性を築いていくことが大切であるとされる。自分のことを理解してくれるようなパートナー的存在を拒否してしまうようでは、人生は辛くなる。しかし、その欠点をもベッカは映画の最後に克服する。

しかし、社会性ばかりが大切にされているわけではない。ベッカは音楽という自分の大切なものを持つ女の子なのである。