不条理な世界と人

映画「クラークス(原題:Clerks)」を観た。

この映画は1994年に制作されたアメリカ映画である。この映画の主人公はダンテ・ヒックスという男で、映画はダンテが仕事をしているコンビニと、ダンテの友達ランドルが仕事をしているダンテのコンビニの隣のレンタルビデオ屋を舞台としている。

ダンテとランドルを中心にその他の人物たちが絡んでくる流れで、物語は進んでいく。

映画はいくつかの部分に分かれて構成されており、それぞれの部分の始まりにはタイトルがついている。そのタイトルは最初から順に①ダンテ、②悪党呼ばわり、③ジェイと無口なボブ、④ランドル、⑤構文法、⑥奇行、⑦魂の浄化、⑧絶不調、⑨前触れ、⑩先見の明、⑪常識論、⑫おふざけ、⑬途方に暮れる、⑭泣き言、⑮秤にかける、⑯カタルシス、⑰決着、である。

この映画は冒頭の①のダンテの部屋と、⑨の場面でのジェリーの家での葬式以外は基本的に、ダンテの働くコンビニとランドルの働くレンタルビデオ屋から場所は移動しない。

ダンテとランドルはコンビニとビデオレンタル屋でそれぞれ働きながら、そこに客が来て、その時の接客がこの映画の見せ場となっている。

ダンテはベロニカという女性と付き合っている。しかし新聞で、ダンテの元恋人のケイトリンが結婚することをダンテたちは知る。ダンテはそのことでイライラして仕事が手につかない。ただでさえ接客業は大変だというのに。

映画の最後の辺りでケイトリンが店に現れる。それをランドルがベロニカにチクる。それが原因で、ダンテとランドルは喧嘩をして店は無茶苦茶になる。しかしダンテとランドルは喧嘩をしたことで気分がすっきりする。終わり。

映画の冒頭で登場するのは駄菓子を作っているメーカーのサラリーマンである。チューリー・ガムというガムを売る駄菓子サラリーマンは、コンビニのレジの前に立ってこう叫ぶ。「タバコなんか買うな!!タバコは高いし、健康にも悪い!!タバコを買うならガムを買え!!」。

ダンテは当然商売の邪魔をされて迷惑だからやめてくれと願い出るが、サラリーマンの説教にのせられて、タバコを買いに来た客たちは、ダンテのことをタバコを売る悪の商人と言いダンテは責められる。タバコを売る奴は悪で、ガムを売る人は正義なのだ。

皮肉が効いているのは、ダンテの友達のランドルである。ダンテは仕事をさぼってダンテのコンビニでポルノ雑誌を立ち読みしているが、ランドルには仕事は大切だからお前も仕事をしろと言う。

するとランドルはこう返す。仕事なら何でもいいのか?ボスニアの殺人部隊はどうなんだ?殺人という仕事は誇れる仕事なのか?と。この映画は狭い人間関係の間に時折、社会風刺が効いている。