欲動は解放するべきか?

映画「カジノ(原題:Casino)」を観た。

この映画は1995年のアメリカ映画で、1970年代当時のマフィアの支配下にあったラスベガスを描いた映画である。映画の主人公はラスベガスのカジノ“タンジール”の実質上の支配人“エース”・ロススティーンであり、エースの妻であるジンジャーと、エースの友達であるギャングのニッキー・サントロとの3人の関係を中心として物語は進んでいく。

エースは賭博のプロで頭の切れる男である。最初はシカゴで不法賭博をするノミ屋として生計を立てているが、その腕を見込まれて、ある日、ラスベガスのカジノ“タンジール”の実質的な支配人として選ばれる。

実質的な支配人というのは、エースがこのカジノ“タンジール”の形式的な支配人ではないことを意味している。カジノ“タンジール”の形式的な支配人は政府の役人が務めている。エースはその政府の役人に代わって、カジノ“タンジール”を支配人という肩書以外の名目で仕切っている。例えば掃除人というような肩書で(だから形式的な支配者ではない)。

ちなみにノミ屋というのは、公的な試合に関して賭けを行い、手数料を手元に入れる仕事である。ノミ屋は例えばレースのどの馬が勝つかを予想させて多くの客からお金を集める。もちろん客の選んだ馬が勝ったら大きな配当金を客が貰えるという条件で。

ノミ屋の元には多くの金が集まる。そしてレースの結果が出ると、ノミ屋は、レースの勝敗を当てた人物に対して集めたお金の中から配当金を払う。レースの結果を当てた人の元には大きなお金が入るとともに、集めたお金の何パーセントかはノミ屋の懐に入るという仕組みだ。

エースの友達ニッキーはその相棒として集金屋として働いている。ニッキーは借金をしてギャンブルをしている客から金を取り上げるのを仕事としている。借りたお金でギャンブルをして返済をせずに手元にある金をまたギャンブルに使おうとしている客の元に集金に行って、貸したお金をきっちりと返済させるのである。

エースの恋女房ジンジャーは、実はエース以外の男が好きである。ジンジャーはエースと結婚した後もその好きな男の手助けをしようとする。ジンジャーの好きな人はたかり屋で金持ちになったジンジャーから大金(2万5千ドル)をたかる。

それを当然エースは気に入らない。このジンジャーの存在がエースとニッキーたちの人生を狂わせていくことになる。

ジンジャーはエースの愛情がただの縛りにしか感じられなかったのではないだろうか?女は結婚して家のことを守るのが仕事。息の詰まるようなことである。ジンジャーは自身の中にある欲動を抑圧し過ぎた。これがこの悲劇の原因になっているのではないのだろうか?