読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

テレビによる犠牲

映画「誘う女(原題:To Die For)」を観た。

この映画は、実際アメリカのニュー・ハンプシャー州で1990年に起こった殺人事件を題材とした映画である。ちなみに映画に出てくる登場人物の名前と、実際の事件の当事者たちの名前とは異なる。

映画の中では3つの集団が中心となって登場する。1つはマレット家、もう1つはストーン家、そしてもう1つは貧しい白人の高校生3人からなる集団である。この映画の主人公スザーンは、ストーン家の娘である。

ある時スザーンはラリーという男と恋に落ちる。このラリーはマレット家の長男である。スザーンとラリーは惹かれあいやがて結婚する。

スザーンには夢があった。それはテレビに出演するという夢だ。ただテレビに出るだけでは駄目である。自分が多く注目され、多く登場すればするほど良い。

スザーンは全国的に有名なキャスターを目指していた。しかし、夫のラリーはスザーンの夢を強く応援しようとは思わなかった。夫のラリーは、スザーンが全国を飛び回る有名なキャスターになることは望んでいなかった。ただ妻としてラリーのそばにいて欲しいのだった(ラリーはスザーンに専業主婦になれとは言っていないが)。

スザーンはラリーのこの考えが気に入らなかった。「人間はテレビに出ると一人前になる」のだから私はテレビに出る。ただちらっと映るだけではなくて、テレビに出続けたい。それがスザーンの望みである。

ある時スザーンは自分の気持ちを理解しない夫ラリーを殺そうと思い立つ。そして自身の勤める地方局の番組作りのために親しくなった、貧しい白人の高校生3人を、スザーンの夫ラリーの殺害のために利用するのである。

高校生の1人は金欲しさに、もう1人はスザーンと友達を続けたくて、もう1人はスザーンと恋愛関係を続けたくて、スザーンに言われた通りにラリーを殺してしまう。

映画の中でスザーンはこう言う。「私は大学も出ているし、職もある、立派な社会人だから捕まることはないわ。でもあんたたち3人は立派な社会人ではないわ。ただのゴロツキ。だから捕まるのはあなたたちよ」。

アメリカにはアメリカン・ドリームと呼ばれるものがある。貧しくても機会を生かせば社会での成功を手に入れることができる。この映画の中に登場する貧しい3人の高校生に平等に機会が与えられているといえるのだろうか?スザーンの描いていたアメリカン・ドリームのために犠牲となった3人の高校生がいると、この映画から読み取ることもできる。アメリカン・ドリームはここでは呪いの言葉なのである。

 

※メディアで、特にテレビで有名になるといいことがあるという思いに囚われて暴走したスザーンは、テレビのための犠牲者であるとも言えるだろう。