石油の利権のための悲劇

 映画「マイティ・ハート‐愛と絆‐(原題:A Mighty Heart)」を観た。

 この映画の舞台は2001年の9月11日後のパキスタンである。この映画の主人公はマリアンヌ・パールというフランス人のラジオ局専属のジャーナリストである。マリアンヌの夫ダニエル・パールはある日パキスタンでの取材中に誘拐される。そして夫は二度と帰らぬ人となるのであった。

 この映画はマリアンヌ・パールの手記「マイティ・ハート」が映画化されたものであり、この映画は実話ベースの映画である。

 2011年9月11日のアメリカ同時多発テロの実行者はオサマ・ビンラディンをリーダーとするアルカイダだとアメリカは断定する(アルカイダはこれを肯定もせず否定もしていない)。そしてアメリカはアルカイダをかくまうタリバン政権を攻撃した。これがアフガニスタン紛争である。

 ではこのアフガニスタン紛争とパキスタンと、パキスタンで起こったウォール・ストリート・ジャーナルの記者であるダニエル・パールの誘拐殺人とは一体どのような関係になるのか?これにはアメリカの思惑を知る必要がある。

 アメリカはトルクメニスタンの石油が欲しかった。石油をアメリカに輸出するルートは2つある。トルクメニスタンから左下に下るイラクを通過するルートと、アフガニスタンパキスタンを通る右下に下るルートである。

アメリカはこの右側のルートを作りたかった。アメリカと友好関係にあるパキスタンはこの思惑に取り入れることは簡単だが、もう一つのルートの通過国アフガニスタンはアメリカに反対する姿勢をとる国である。アフガニスタンの存在がアメリカの石油利権の問題の問題点となった。

アフガニスタンをどうにかして手に入れたいと思ったアメリカは、パキスタン政府に介入してタリブの神学生をアフガニスタンに送り込んだ。タリブの神学生とはタリバンのことである。アメリカはアフガニスタンを支配するために、パキスタン政府にタリバンを作らせたのである。

又、アメリカはビンラディン率いるアルカイダアフガニスタンに反アフガニスタン政府として送り込む。

アメリカはアフガニスタン政府を打倒するために、タリバンアルカイダを利用したのである。これが1996年頃の出来事である。しかし、タリバンアルカイダを利用するというアメリカの図式は1998年頃から壊れ始める。タリバンアルカイダアフガニスタンのようにアメリカに反抗しだすのである。そして2001年9月11日にアメリカ同時多発テロが起こる。

この映画の舞台はアメリカと友好的な関係にあるパキスタンである。パキスタン内部にも反アメリカ的な動きが存在するのである。

パキスタンアフガニスタンイラクの隣国である。反アメリカの勢力がいても不思議ではない。この映画で描かれる事件は、中東の人々の中にあるアメリカへの怒りが現れている。映画中、記者の立場の中立性が言われるが、そんなことは復讐者たちには関係ないのかもしれない。