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国民皆保険がない社会

 映画「摩天楼を夢みて(原題:Glengarry Glen Ross)」を観た。

 この映画は1992年に発表されたアメリカ映画で、原作はデヴィト・マメットのピューリッツァー賞文学賞を受賞した名作戯曲「グレンギャリー・グレンロス」である。

 この映画の舞台となるのは、ミッチ&マレー不動産の小さな支店の会社員たちである。不動産会社は何をして儲けているのか?不動産会社は土地を売って金を儲ける。どうしたら客は土地を買うか?その土地を買った後にその土地の価値が上がり、その差額が大きな収入になることを示せば、客は土地を買う。

 土地は必ず値上がりするのか?それは誰にもわからない。確かな価値など土地にはありはしないのだ。価値が上がるか確信を持てない土地を売るのに誠意は必要か?必要ではない。売り手が信じているのは、土地を売って得るお金であり、土地の値が上がろうか下がろうか関係ない。ただ今お金が入ってくればそれでいいのである。売り手にとって土地はただの商品に過ぎない。

 この映画の中には4人の営業者と1人の管理人が登場する。4人の営業の内のシェルドン・レビーンは娘がいるが、その娘は病気で入院している。アメリカで家族の1人が病気で入院するとどういうことになるのであろうか?

 それは一家の破産である。アメリカでは公的な医療保険が当時なかった(アメリカではオバマ大大統領が国民皆保険制度を実施しようとしたが、共和党からの大反発にあった。ちなみに共和党の支持母体には、公的医療保険が実施されていたら恩恵を受けるであろう、白人の貧困階級の人たちも含まれている)。

 アメリカで例えば現在でも盲腸の治療に100万円以上が掛かったということが言われたりしている。もし家族の1人が大病を抱えて入院ということにでもなったりすると、相当な出費が予想される(盲腸の手術の金額の例に戻る。上記の例は保険が適用されて100万円以下になったようで、実際に掛かった費用は500万円以上だったそう。ちなみに日本で盲腸の手術をして掛かる費用は10万円程度だそう)。

 シェルドン・レビーン(シェリー・レビーン)は娘の医療費を自分の仕事で稼ぎ出すために必死であるが、そんな時に本社からの使いの者がこう言い放つ。「4人の内1番と2番以外はクビだ!!」この言葉がシェルドンをいっそう追い詰める。そして追い詰められたシェルドンはいつも以上の大嘘をついて大金を得ようとするが、それも失敗に終わる。現代アメリカの悲劇を描いた映画であった。