コンピュータへの信頼度

 映画「アヴェンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(原題:Avengers:Age of Ultoron)を劇場で観た。

 タイトルにあるアヴェンジャーズとはアメリカン・コミックスの主人公たちから成る、いわゆるヒーローたちであり、エイジ・オブ・ウルトロンのウルトロンとは、アヴェンジャーズの一員のアイアンマン/トニー・スタークが作り出した人工知能のことである。

 この映画で描かれるのは、ウルトロンという人工知能と、アヴェンジャーズというアメコミ・ヒーローとの戦いである。この戦いに人類はアヴェンジャーズとウルトロンのどちらの側につくかというと、アヴェンジャーズの側につく。アヴェンジャーズとは、人類の正義や愛のために存在する、仇討人(アヴェンジャー/avenger)なのである。

 アヴェンジャーズは人類の存続のために存在する正義の味方なのであるが、その正義の味方であるアヴェンジャーズは自ら、人類そしてアヴェンジャーズに敵対するウルトロンを作り出してしまう。アヴェンジャーズは人類の問題の種の一種を自ら蒔いてしまったのである。

 では何故アヴェンジャーズの一員トニー・スターク/アイアンマンは、自らの手で強大な敵を作り出してしまったのか?それは、アヴェンジャーズ全員が死んでしまうという悲劇的な夢想を見るからである(トニー・スタークは、人に悪夢を見せる能力のある超能力少女のワンダ・マキシモフにアヴェンジャーズが全員の死という悲劇的な結末(未来)を見せられる)。

 トニー・スタークは、悲惨な未来が訪れるかもしれないという夢想により、自分の力で悲惨な出来事を避けようとして、わざわざ自分から悲惨な状態を招いてしまうのである。では、人類にとっての悲劇を生んだトニー・スターク/アイアンマン考え方とは一体どのような考え方なのだろうか?

 それは、力や能力的に限界(例えば”死”)がある人類を、力や知能で優れているコンピュータが管理してくという考え方である。つまり、人間にとって良きことはコンピュータが知っているはずなので、人類の舵取りをコンピュータに委ねてしまおうとするのである。アヴェンジャーズの代わりにコンピュータが人類のために戦ってくれれば、アヴェンジャーズ自身が死ななくて済むのである。

 トニー・スターク/アイアンマンは人類のためを思って行動するのであるが、その行動が人類の悲劇として裏目に出てしまうのである。人間の将来を人間以外のものが支配する時には、当然人類の希望とは違う結論に陥ることもあるのである。人類の幸福は人類しか考えられないのかもしれない。

 人間とは感情的な生き物である。時としてそのエモーショナルさが、人類の判断を鈍らせてしまうことがある。しかし、人間は感情に支配されている部分も含めて人間なのであり、人間は人類の幸福のために自ら死ねと言われてもそうは行動できないのである。感情は非合理的で不都合にも見えるが、感情が人類を生かしていないとは言い切れないのである。

 

※コンピュータは人間より人間的な考え方ができるのであろうか?コンピュータが人間的に考えたことで、人間を死に至らしめるという結果が生じないか?コンピュータは信頼に足るか?

※感情は非合理的で人類の計画を狂わせてしまうものなのかもしれないが、人間が感情的に動いて良い結果が出るか出ないかは、誰も予測ができないことである。つまり感情的に動いても、合理的に計算づくで動いても、どちらの場合でも結果は予測不可能である。つまり感情という非合理的に見えるものが良い結果をもたらすことも十分に有りあるのである。