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生活と愛

 映画「ウェディング・シンガー(原題:Wedding Singer)」を観た。

 この映画は”結婚”を巡る物語である。この映画を観ていると結婚を通じて人が何を一番大切にしていて、何を譲ることができないのかということが見えてくる映画である(この考え方からいくと、結婚とは相互の譲渡と保守のせめぎあいであるといえる)。

 この映画の主人公ロビー・ハートは元ロック歌手で今は結婚式で歌うウェディング・シンガーをしている。ロビーには結婚を約束したリンダという女性がいた。ロビーとリンダの結婚式の日リンダはロビーの前に現れなかった。

 リンダは結婚しなかった理由を後にロビーにこう告げる。「私はデビット・リー・ロスみたいなロック・ミュージシャンと結婚したかったの。だってウェディング・シンガーの妻になってもこの街を抜け出せないじゃないの!!」

 映画の後半になるとリンダは「妥協して」ロビーとよりを戻すと言う。それを聞いたロビーはこう言う。「妥協!?そんなんじゃダメだ!!」ロビーは恋愛を妥協してするものとは考えられなくなっていた。なぜならロビーはこの映画のヒロイン、ジュリア・サリバンに恋していたから。

 この映画のヒロイン、ジュリア・サリバンには結婚を約束した男性グレン・グリアがいた。グレンは証券マンで債権を販売して大金を儲ける。いわゆるエリートの男である。ジュリアもグレンの金と生活保障にひかれて、グレンとの結婚へ向かっていたのかもしれない。

 映画中ジュリアはこんなことを話す。「どんなささいなことでも相手の気持ちをわかって尊重してくれるってことは大切なことだわ」と。グレンという男はお金持ちで、軟派な男だ。結婚前の独身パーティーだといってジュリア以外の女性と遊んでいるような。

 映画の最後でジュリアはグレンの思いやりの無さに耐えられなくなる。グレンは言う。「飛行機内の通路側は、人が通ったり、物が運ばれたりしてきて肘に当たるから小柄な君にちょうどいいよ」「ベガスの夜景が機内から見たいの?じゃあ通路側から身を乗り出して見なよ。気にしないから」

 グレンは細やかな思いやりに欠けているところがあるようである。金と生活保障の方は問題ないのかもしれないが。

 ロビーはリンダに結婚を断られた後、自分は金も地位も家もない男だと言って絶望的に落ち込む。しかしロビーには相手への思いやりがあった。相手の気持ちに気づくことができる優しい心を持った男なのだ。

 グレンとロビーは対照的な人物像だといえるかもしれない。金と生活保障がある男と、金も地位も家もないが心だけは持っている男。そして何よりもジュリアとロビーの間には愛があった。相手を思いやる繊細な心が支える愛が。

 お金が無くては生活できない。しかし心が無いなら、そんな仲はなんと虚しいことだろう。