自分の正直な気持ちを見つける

 映画「小悪魔はなぜモテる?!(原題:Easy A)」を観た。

 この映画は女子高校生を主人公とした、いわゆる学園モノである。カルフォルニア州のオーハイにある公立オーハイ北高校に通う主人公の少女オリーブ・ペンダーガストは地味で目立たない高校生活を送っているが、ある日友達に「週末はジョージという大学生と過ごしたわ」という嘘をついたことがきっかけとなって、校内に不貞な女性(アバズレ女)という噂が流れて、学校中から注目を集めるようになる。

 誰とでもセックスをするというレッテルを結局貼られることになったオリーブは、周囲からの注目を集めてまんざらでもないのだが、物語の終盤では、誰でもセックスする女という周囲からの視線に苦しめられることになる。

 主人公のオリーブの中には、この映画を見ている限りは不貞な女性への偏見(おかしな言葉だが)はあまり無いように思われる。しかし、オリーブと同じ学校に通う、十字架クラブのマリアンヌにとっては不貞は許されないことである。

 マリアンヌは不貞は神からの罰を受けるのだと言ってオリーブを追い詰めていく(マリアンヌはきっと自分自身をも追い詰めているのだろうが)。しかしオリーブを追い詰めて行くのは、マリアンヌというキリスト教の信仰者のせいだけではないようである。

 オリーブを追い詰めて行くのは、オリーブ本人の心なのである(マリアンヌが自分を追い詰めているように)。オリーブの心の中にある罪の意識とは”嘘”と”不貞”である。オリーブは自分が不貞であるという嘘をつくことにより自らを追い詰めていくのである。

 “嘘”をつくことは良くないと思い、”不貞”も良くないことだとオリーブは思っている。オリーブは”不貞”であるという”嘘”をつくことにより、”不貞”という状態自体を良いことだと思っていない自分に嘘をついているのである。

 “不貞”は良くないことだと思っているのにわざわざ”不貞”な女性を演じているのである。そして、こともあろうに「”不貞”なんてどおってことないわ」と自分を偽っているのである。”不貞”が許せないくせに”不貞”を認めるような態度をオリーブはとっている。

 オリーブが自分の気持ちに正直でないことは明らかである。ここで問題なのは”不貞”が良いことだとか、悪いことであるというような判断ではなく、オリーブが自分の正直な気持ちに素直でないことである。

 オリーブの精神はある意味倒錯しているといえる。自分の気持ち考えに正直でないならば、自分の考えを見つめ直したり、反省したりすることもできない。自分の気持ちに正直であることは、自分に対応する物事に対して接していく時の前提条件であるようなことなのである。

 自らの考えを持って相手と向かい合い、お互いの価値観を認め合っていく。そのためには自分の中に何らかの倒錯(こんがらがり)があっては先に進めないのである。