宗教と政治

 映画「ジーザス・キャンプ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~(原題:Jesus Camp)」を観た。

 この映画は2006年のアメリカのドキュメンタリー映画である。

内容を簡単に言うとこうだ。この映画は、アメリカの政治的右派を支持するキリスト教福音派もしくは、キリスト教原理主義である、つまり宗教右派の子供たちへの宗教的な洗脳を描いたドキュメンタリーである。

 アメリカには政治的右派と呼ばれるブッシュ大統領を支持したような人たちがいて、そのブッシュ大統領を支えていたのが宗教的右派の人たちである。

 宗教的右派とは、キリスト教原理主義(≒キリスト教福音派)のことである。

 このキリスト教右派の人たちが信じているのはイエス・キリストであり、このキリスト教右派の人たちは、神が天と地と人間を作ったと本気で信じている。イエス・キリストの存在を信じ、天地創造を信じているだけだったら本人の自由の問題で済ませるのだが、問題はキリスト教原理主義の人たちの教化の仕方の強引さと、キリスト教原理主義者たちの行動が政治に利用されている点にある。

 人間の7歳から9歳の間にその人の将来を決定する学習(洗脳)が可能であると、映画の中に登場するキリスト教福音派の牧師が言う。だから子供のうちに福音派を信じるように洗脳するのだと。

 キリスト教福音派の子供たちの多くは学校に通学せずに自宅学習をしている。自宅学習という状態では様々な人たちと接触するような場はない。関係が閉じられてしまうことになる。

 そしてキリスト教福音派の親たちは子供たちを夏の合宿に参加させる。ここには多くの子供たちが集まるが、どの子もキリスト教福音派予備軍の子供である。多様性はかなり薄められている。

 そのキャンプで牧師たちが、子供たちに教え込むことはこうだ。「ブッシュ大統領に祈りなさい!!中絶は絶対ダメです!!」宗教的なトランス状態を牧師たちは自分たちの意見を投入するために利用する。

 「世の中の物のほとんどは悪魔がもたらしたものです!!ハリー・ポッターも悪魔の手先です!!甘いキャンディーもダメ!!悪魔よ!!あなたたちも悪に染まっているのよ!!助かりたければ神様に祈りなさい!!そうすれば救われるから!!」

 甘いキャンディーは悪で、ありもしない大量破壊兵器があるといってイラク戦争を始めたブッシュ大統領は神の使いなのだろうか?

 映画の終盤で福音派の学習(?)を受けた子供たちは言う。「神様のために死ぬことはかっこいいことなの!!」

 世の中に生きながら何か良いことをしてくれるのなら構わないが、神様のために人を殺してしまうようなことが良いことなのなら、それは勘弁して欲しい。

 

キリスト教右派とはキリスト教を信じることが政治的右派を支持することに繋がることをよしとするような集団である。つまり政治的右派の支持拡大のために宗教が利用されている。政教分離の原則がここでは破られているわけである。