これは誰の選択か?

 映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(原題:Once Upon A Time In America)を観た。

 禁酒法時代(1920~1933)のアメリカを描いた映画で、映画の主要人物たちは、アメリカのニュー・ヨークのユダヤ人街のギャングである。特に主要な人物としては、ヌードルズ(チンピラ集団のリーダー的存在)と、マックス(集団の準リーダー的存在、時として主リーダとなる)がいる。

 ヌードルズとその他4人(マックスを含む)は、貧乏な家庭の出身であるらしく、自分たちの小遣い稼ぎに盗みを繰り返している。そのうちに5人は、自分たちの住んでいる管轄の警官(男)が、未成年(女の子)とセックスしているのを写真に撮り、それを脅しの種に使って、自分たちの行う犯罪を見逃すという条件を、警官から取り付ける。

 やがて大人へと成長したヌードルズたち5人は、6人目の仲間といえるファット・モーの店の裏で、当時禁止されていた酒を販売するために、酒の密輸を行っている。

 ある日、ヌードルズは、マックスの女にこう言われる。「マックスは連邦準備銀行を襲うなんて、とんでもないことを考えている。だからマックスを、今のうちに警官に引き渡して、そんな無茶な計画はやめさせて」と。

 それを聞いたヌードルズは、酒を密輸するという情報を警官に密告して、マックスを刑務所の中に閉じ込めようとする。しかし実際は、ヌードルズの仲間が全員警察の襲撃によって死ぬ事になる。

 その事件から35年後、ヌードルズは、マックスに再開する。再開したマックスは、事件を、警察とマフィアとマックスがグルになって起こしたことだと認め、自分はヌードルズから、金も女も友達も奪ったのだと言う。

 マックスは、偽名を使って長官にまでなったが、汚職がバレて、殺されそうになっている。マックスは、机の上に銃を置いてこう言う。「ヌードルズ、俺はもうすぐ殺されることはわかっている。だからどうせ死ぬならお前に殺されて死にたい」と。

 しかし、ヌードルズはマックスを殺さずに、その場から立ち去る。「お前を俺は恨んでいない」という言葉と共に。

 この映画は、男同士の友情を描いた物語なのだろうか? ヌードルズという人物には、欠点もある。それは、女性に対しての態度の問題である。ヌードルズは、初恋の人のことをトイレからずっと覗いているし、その初恋の人との最初で最後のセックスは、レイプである。

 ヌードルズの幼少期、少年時代は安定したものではなかった。それがヌードルズを、こういう人格に育てたのかもしれない。ヌードルズの生きていた世界は、そんなに生易しいものではなかった。ヌードルズは荒々しく育ったのだ。これは誰の選択か? ヌードルズか? ヌードルズの両親か? 国か? 神か? それとも、もしかして私たちの選択なのか?