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偶発性への気づきと、選択肢の存在

 映画「マグノリア(原題:Magnolia)」を観た。この映画はアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス市のハリウッドという場所で、2日間という短い時間に起こる物語であり、またこの物語の主人公は多数存在する。

 主要登場人物の大半が過去からの問題に縛られている。この映画の登場人物の中心となる人物は、65歳でガンに伏せてる老人アール・パートリッジである。この映画の登場人物は、何らかの形でアールに関わっている。

 アールに捨てられた過去を持つ息子のフランク・T・J・マッキー(フランクは自分と母を見捨てたアールを許せない)。アールの妻でアールの財産目当てで結婚したことを現在のアールへの愛ゆえに後悔しているリンダ。アールの制作したクイズ番組の司会者でがん闘病中であり娘から嫌われている状態を打開したいと思っているジミー・ゲイター。ジミー・ゲイターの娘で過去に父親から性的虐待を受けたと思っているクローディア・ウィルソン。アールの制作しているクイズ番組で天才クイズ少年として人気だった現在は落ちこぼれのゲイで好きな男に告白できずにいるドニー・スミス。アールの制作してるクイズ番組の現在の天才少年で父親に愛されていないと感じているスタンリー。(その他にアールの看病をしているホスピスフィル・パルマ。クローディアに恋をするバツイチ警官のジム・カーリングがいる。)これらの登場人物の数時間のあり方が映画の中で映し出される。

 映画の冒頭には、3つの必然的なような偶発的な出来事が説明される。3つとも奇妙な関連により成り立っている偶発的出来事である。(①3人の強盗の名とその現場の名前が共通していた。②前日あった男を次の日に偶然殺してしまった。③飛び降り自殺しようとした自分たちの息子を撃ち殺してしまった両親。)

 この映画で印象的なのは、登場人物たちが1つの曲の各部分を歌い分けるシーン(このシーンの後に、この映画はそれぞれの葛藤を解決する方向に進み出す。)と、空からカエルが降ってくるシーン(この偶発性が登場人物たちを癒す。)である。

 スタンリーに焦点を当てて述べる。スタンリーは天才クイズ少年で父親からも周囲からもクイズに正解し続けることを求められる。スタンリーはクイズに正解することだけを父親に求められていて、それが苦しくて、父親に大事にして貰っていないと感じている。

 周囲の人たちは彼が天才少年として行動することを期待している。そんな現実に映画の終盤にスタンリーはキレる。「僕は君たちの見世物じゃないんだ!!」そうしてその後スタンリーは空からカエルが降って来るのを見る。

 「こういうことも世の中には有り得るんだ」その時スタンリーは過去から解放される。「世の中で起こることは必然的(クイズの問答)なことばかりだと教えられ、学んできたけど、予想外の事も起こるんだ」その後彼は父親に伝える「僕を大事にして」と。スタンリーは、僕を大事にしない父親が有り得るように、僕を大事にする父親も有り得るんだと知る。選択肢は目の前に存在しているのだ。